外国人の人権

最判平成7年2月28日(地方自治での定住外国人の選挙権)

事実の概要

韓国籍の永住資格者らが選挙人名簿への登録申し出を却下され、違憲を争った。

結論

原告(外国人側)の上告棄却

①外国人は、93条2項で選挙権を有するとされている住民には含まれておらず、選挙権が保障されていない。

②しかし、地方自治は住民の意思に基づいて処理するものと憲法が保障しているわけだからその地域に居住し密接な関係を有している外国人なら、地方公共団体の長や議員の選挙権を与えても意見ではない。

③まとめると、憲法上外国人に選挙権が保障されているわけではないが、選挙権を与えても違憲になるわけではない。

 

 

最大判昭和53年10月4日(マクリーン事件)

事実の概要

在留期間1年の許可を得て来日した米国人のマクリーンはデモなどの政治活動を行ったため,在留期間の延長を拒否された。そして、その法務大臣の処分を不服とし、取り消しを求めて提訴した。

結論

マクリーン(原告)の上告棄却

①憲法の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象にしているものを除き、日本に在留する外国人にも等しく及ぶ。

②政治活動の自由は、日本の政治に影響を及ぼす活動など外国人の地位にかんがみて相当でないものを除いて、認められる。

③しかし、在留期間の更新を考える際に、基本的人権として保障されている行為を消極的に斟酌されないことまで保証されていない。

④よって、処分は違法ではない。

 

 

最判平成元年3月2日(塩見訴訟)

事実の概要

廃疾認定日に韓国籍だった原告には障害福祉年金が支給されないとされた。請求の却下に対して、改正国民年金法における国籍条項は憲法14条、25条に違反すると主張して処分の取り消しを求めた。  (原告は幼いころはしかが原因で失明している。その失明に対する障害福祉年金。)

結論

原告の上告棄却

①当時の国民年金制度は、全額国庫負担の無拠出性の年金で、立法府はその支給対象者の決定について広範な裁量を有している。

②また、特別な条約がない限り、在留外国人をどのように処遇するかは、当時の事情に照らして、政治的判断により決定できる。

③よって、自国民を在留外国人よりも優先的に扱うことも許される。

法人の人権

最大判昭和45年(八幡製鉄事件)

事実の概要

八幡製鉄所の取締役が会社の名義で自民党に寄付を行った。株主がそれに対し、寄付は事業目的の範囲内ではないなどとして、取締役の責任を追及するため株主代表訴訟を提起した。

結論 

上告棄却 株主側の敗訴確定

①憲法にある国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能な限り内国の法人にも適用される。

②会社は特定の政党を支持するなど政治的行為をなす自由を有しているので、政治資金の寄付も行える。

 

 

最判平成8年(南九州税理士会政治献金事件)

事実の概要

南九州税理士会が税理士法改正のための政治工作資金として、会員から特別会費徴収しようとした。それに反対した会員が、役員の選挙権の停止などの不利益を被ったため、特別会費の納入義務の不存在確認などを求めて出訴した。

結論

2審では、原告(会員側)が敗訴したが、最高裁では一部破棄自判、一部破棄差し戻しとなった。つまり、原告の一部勝訴

①税理士会が政治団体に寄付を行うことは、税理士会の目的の範囲外の行為なので、特別会費徴収の決議も無効である。

②税理士会は、強制加入の団体である。(加入しないと税理士と名乗って仕事ができない。)なので、会員に要請できる協力義務にも限界がある。

③会員個人の政治に対する自主的な決定権を排除してまで協力義務を課すことはできない。

9条関連の判例(2)

以下の判例は安全保障条約と在日米軍に関するものです。法律関連の資格試験では、結論①②に関する問題が択一式で出題されるのをたまに目にする気がします。

 

最大判昭和34年(砂川事件)

事実の概要

米軍田市川飛行場の拡張に反対していた被告人は、境界柵を破壊して侵入したため旧安保条約に関する刑事特別法違反で逮捕された。被告人は米軍の駐留を違憲と主張した。

結論

①9条2項が禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使しうる戦力をいうものである。外国の軍隊が、我が国に駐留していたとしてもこれに当たらない。

②安全保障条約は、統治行為論により一見極めて明白に違憲無効でない限りは、司法審査にはなじまないとした。