法人の人権

最大判昭和45年(八幡製鉄事件)

事実の概要

八幡製鉄所の取締役が会社の名義で自民党に寄付を行った。株主がそれに対し、寄付は事業目的の範囲内ではないなどとして、取締役の責任を追及するため株主代表訴訟を提起した。

結論 

上告棄却 株主側の敗訴確定

①憲法にある国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能な限り内国の法人にも適用される。

②会社は特定の政党を支持するなど政治的行為をなす自由を有しているので、政治資金の寄付も行える。

 

 

最判平成8年(南九州税理士会政治献金事件)

事実の概要

南九州税理士会が税理士法改正のための政治工作資金として、会員から特別会費徴収しようとした。それに反対した会員が、役員の選挙権の停止などの不利益を被ったため、特別会費の納入義務の不存在確認などを求めて出訴した。

結論

2審では、原告(会員側)が敗訴したが、最高裁では一部破棄自判、一部破棄差し戻しとなった。つまり、原告の一部勝訴

①税理士会が政治団体に寄付を行うことは、税理士会の目的の範囲外の行為なので、特別会費徴収の決議も無効である。

②税理士会は、強制加入の団体である。(加入しないと税理士と名乗って仕事ができない。)なので、会員に要請できる協力義務にも限界がある。

③会員個人の政治に対する自主的な決定権を排除してまで協力義務を課すことはできない。