最判平成元年12月14日(どぶろく裁判)
事実の概要
無免許で清酒を自家製造した被告人は、酒税法違反で起訴され、有罪となった。原告は、自家用の酒を造り楽しむことは憲法第13条の幸福追求権により保障されており、また、立法府の裁量を超えるとして31条にも反すると主張した。
結論
被告人の上告棄却
①本件の酒税法の規定は、自己消費を目的とする酒類製造であっても、放任すれば酒税収入が減少し、国の重要な財政収入を確保できない恐れがあるので、免許制としたものである。
②自己消費目的の酒類製造の自由が制約されるとしても、立法府の裁量権を逸脱し、著しく不合理であることが明白であるとは言えない。
〈備考〉酒を造り楽しむ権利は憲法上保障される権利か否かは、言及されていない。
最判平成12年2月29日(エホバの証人不同意輸血事件)
事実の概要
原告の妻はエホバの証人の信者で、いかなる場合にも輸血は一切拒否するという信念を持っていた。
その旨を入院する際に病院側に伝えていたが、その後の手術の際、輸血以外に救命の可能性は少ないと判断した医師によって輸血がなされた。
そして、原告の妻の死亡後、医師を相手取って精神的苦痛を慰謝する損害賠償を請求した。
結論
2審で原告の請求一部認容、被告の上告と原告の付帯上告棄却
①自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するというような意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重される。
②いかなる場合にも輸血を拒否する患者に対し、病院側は輸血拒否の意思を尊重しつつも他に救命手段がない場合には輸血をする方針を取っていることを説明しないまま手術を行った。
③医師らは、その方針を説明して、患者自身の意思決定に委ねるべきであった。
④よって、医師らは人格権を侵害したとして、精神的苦痛に対し、慰謝すべき責任を負う。