公務員の人権

最大判昭和49年11月6日(猿払事件)

事実の概要

非管理職である被告 (郵政事務官で同地区労働組合協議会事務局長) は衆議院選挙の際、選挙用ポスターを張るなどしたことにより、人事院規則に反するとして、国家公務員法の処罰規定より罰則を受けた。それに対し、

①政治活動の禁止は、表現の自由を認める憲法21条に反しないか、

②政治活動の制限、禁止規定が、公務員の職種に関係なく一律に適用されるのは許されるのか、

③国家公務員法の罰則規定は制裁として相当性を欠き、憲法31条に反しないか、

④処罰の対象となる政治的行為を定めることを、人事院規則に委任することは合憲か、

と被告は主張した。

結論

1審2審で被告無罪となるも、最高裁の破棄自判により罰金5000円

①に関しては、公務員の政治的中立性を損なう恐れのある行動を禁止しているだけで、それ以外の行為により意見を表明することができる。

②に関しては、政治的中立性を損なう行為の禁止と、公務員の政治的中立性を保つという禁止目的とは合理的な関連性があり、職種等を区別することなく禁止するとしても、この合理的な関連性が失われるものではない。

③に関しては、国家公務員法の罰則規定は、保護法益の重要性を考えると、罰則規定に対する立法機関の決定が裁量の範囲を逸脱していない。

④に関しては、国家公務員法は人事院規則に罰則規定となる政治的行為を定めることを委任するものであると理解できる。そして、そのように定められた政治的行為は、違法性を帯びるものであるから、憲法の許容する委任の限度を超えることにならない。

 

〈備考〉公務員の政治活動について、特定の候補者の当選を目的とする選挙運動を行うことは禁止されていますが、特定の政党に加入することは禁止されていないようです。